ジョジョ第6部で、Dioが言い、プッチ神父が受け継いだ「14の言葉」を私なりに考察した結果をお話しします。
まず元ネタを2つ挙げ、その後に14の言葉1つ1つについて考察していきます。
まず、14の言葉の1つ目の「元ネタ」について。
14の言葉の「元ネタ」①:映画AIの言葉の羅列
14の言葉は一見意味が無いように見える言葉の羅列です。ただ、その言葉1つ1つに意味があるように見えて、魅力的なのですが。
これとそっくりの言葉の羅列があります。
「巻き雲、ソクラテス、分子、デシベル、ハリケーン、ドルフィン、チューリップ、モニカ、デイビッド、モニカ」
これは映画AIの中で登場したセリフです。
どうですか?14の言葉とそっくりじゃないですか?
AIロボットのデイビッドに対して、その所有者であるモニカが語りかけた言葉の羅列が上記です。
この言葉をAIでロボットのデイビッドに語りかけることで、「デイビッドが愛する対象を、モニカとしてインプット」することができます。
つまり、上記の言葉の羅列をモニカがデイビットに対して語りかければ、デイビットはモニカを一生愛し続けるようになります。
これが「14の言葉」のそもそもの元ネタであると考えました。
映画AIでは幼い少年ロボットのデイビットが愛する対象をモニカにするために、上記の言葉の羅列が使用されました。
つまり、ロボットが母親役を愛するスイッチが「言葉の羅列」です。
それに対してジョジョでは、生まれてくる緑の赤ん坊がプッチ神父を愛するスイッチとして「14の言葉」があるのではないか。
そもそも「緑色の赤ちゃん」の元はDioのスタンド。Dioは自らのスタンドを一度手放し、それに36人の罪人の魂を吸収させて緑色の赤ちゃんが生まれました。
Dioの言葉に次があります。
朽ちていくわたしのスタンドは36の罪人の魂を集めて吸収。そこから『新しいもの』を生み出すであろう。
「生まれたもの」は目醒める。
信頼できる友が発する14の言葉に知性を示して…『友』はわたしを信頼しわたしは『友』になる。
太字の部分はまさに、映画AIで母親役がロボットに対して行ったことと同じです。
プッチ神父が14の言葉を発すれば、生まれたもの(緑色の赤ちゃん)が、プッチ神父のことを「友」として認識する。
先程のDioの言葉を翻訳すれば次のようになります。
「信頼できる友(プッチ神父)が発する14の言葉に知性を示して…『友(プッチ神父)』はわたし(Dioのスタンドが元になった緑色の赤ちゃん)を信頼しわたしは『友(プッチ神父と融合する)』になる。」
このように、
「14の言葉」の元ネタが、映画AIで登場する幼い少年が母親役を愛するようになるための「言葉の羅列」と考えれば、ジョジョのストーリーとスムーズに融合できますし、すんなり解釈できます。
14の言葉の「元ネタ」②:クトゥルフ神話
次はもう1つの背景となる元ネタについてです。
それは「カブト虫」です。
次の14の言葉を見て下さい。
- らせん階段
- カブト虫
- 廃墟の街
- イチジクのタルト
- カブト虫
- ドロローサへの道
- カブト虫
- 特異点
- ジョット
- 天使 (エンジェル)
- 紫陽花
- カブト虫
- 特異点
- 秘密の皇帝
このように、14の言葉の中で「カブト虫」は4回も出現しています。
一説ではカブト虫(ビートル)が4回出てくるから、ロックバンドのザ・ビートルズ(メンバーが4人)が元ネタでは?という解釈がありますが、ちょっと違うのではと思っています。
それよりも次のように考えた方が、つじつまが合いそうな気がします。
それは「クトゥルフ神話」です。
クトゥルフ神話(クトゥルー神話、ク・リトル・リトル神話、クルウルウ神話とも呼ばれる)は20世紀にアメリカで創作された“架空の”神話です。
この中に「カブト虫」が出てきます。
正確には「知性のあるカブト虫」あるいは「知的甲虫生物」が、クトゥルフ神話の中に登場します。
どうですか?
「知性・知的」という部分にジョジョの匂いを感じませんか?
クトゥルフ神話では「時間の秘密を解き明かした唯一の生物」として、「イスの偉大なる種族」が登場します。
この「時間の秘密を解き明かした」という部分にもの凄く、関連性を感じます。
プッチ神父は緑色の赤ちゃんと融合した後、「時を加速させる能力」を得ます。これはまさに「時間の秘密を解き明かしていなければ出来ないこと」です。
また、イスの偉大なる種族はとてつもない科学力を持っていて、「互いに精神を交換する装置」を使って時間と空間を超越したと言います。
イスの偉大なる種族は「飛行するポリプ(盲目のもの)」に絶滅寸前まで追いやられますが、精神交換移動によってはるか未来の生命体である「知性のあるカブト虫」に乗り移って生き延びました。これが「新・偉大なる種族」となりました。
「精神交換に関するシーン」はジョジョ第6部の中では(私の記憶では)ありませんが、なにか“関連性”を予感させます。
また絶滅寸前になった時に、「未来の知性のある生物に乗り移って生き延びる」という点が、プッチ神父が目指しているモノに似ていると感じました。
プッチ神父は現実の世界に絶望していて、だからこそ「天国」を目指した。
イスの偉大なる種族が現実世界で敵に追いやられ「絶望≒死」しかけた時、未来の知性あるカブト虫に乗り移って生き延びる(≒天国、再生)という構図が似ていると感じました。
言うなれば「死そして再生」の象徴が「カブト虫」なのではないか。
だからこそ14の言葉には「カブト虫」が4回も出現するのではないか。
このようにクトゥルフ神話視点で「カブト虫」を見ていくと、ジョジョ第6部のストーリーと似ている点が見つかります。
14の言葉に「カブト虫」が4回も出現するのは、それだけ何か重要な意味があるから。それこそが「死そして再生」なのではないかと考えました。
。。。
このように2つの元ネタを考えた上で14の言葉それぞれの意味を考察していきたいと思います。
らせん階段
「らせん」は無限に上昇していきます。これを「生命の象徴」に例えることもあります。
このことから、らせん階段は「生命の象徴」なのかもしれません。
また個人的には「DNAの二重螺旋構造」をも表しているのではないかと考えました。
カブト虫
カブト虫は冒頭の元ネタを考察したように、「死と再生」を表していると考えました。
また、カブト虫はクトゥルフ神話では、「新・偉大なる種族」として語られます。
プッチ神父が願ったのは「生命そのものを根本から作り変えて、新しい“種”とも言えるモノを創造すること」だと感じます。
これはクトゥルフ神話で言うところの「新・偉大なる種族」であり、それこそが「カブト虫」だと考えます。
廃墟の街
旧約聖書「創世記」の中で、ソドムとゴモラという街は住民の罪悪によって神の火に焼かれて滅びた、とされています。
このソドムとゴモラが「廃墟の街」だと考えました。
Dioにとっては天国に至る手前の世界は地獄のようなモノだと考えられます。
そしてそのような世界は神の火によって廃墟と化してしまえばいい。
あるいは「この世は既に廃墟の街」とも考えられます。
このような理由から14の言葉の中に「廃墟の街」が加えられたのではないかと考えました。
イチジクのタルト
イチジクは聖書において重要な意味を持つようです。
アダムとイブが食べた「知恵の樹の実(禁断の果実)」がありますよね。これはリンゴとされていますが、旧約聖書にはそのような記述は無いようです。
また、リンゴは寒冷な中央アジア原産のため、エデンの園があったペルシャ湾では育たないとのことです。
ではアダムとイブは何を食べたのか?
それが「イチジク」だったのでは、という解釈があります。
ダン・コッペル著「バナナの世界史」によると、古代のインド以西の中東地域においてはバナナはイチジクと呼ばれていました。
また、アラビア語で書かれたコーランに出てくる楽園の禁断の果実「talh」はバナナと考えられています。
さらに、ヘブライ語聖書では禁断の果実は「エバのイチジク」と書かれているそうです。
これらのことから、アダムとイブが食べた禁断の果実はリンゴではなく、「イチジクと呼ばれていたバナナ」だったという仮説があります。
そう考えると「イチジクのタルト」はアダムとイブが食べた「禁断の果実」と考えられます。
アダムとイブは食べることを禁じられていた禁断の果実を食べました。
この結果、
- 人間は必ず死ぬようになった
- 男は労働の苦役を負い
- 女は出産の苦しみがもたらされた
とされています。
天国の実現の段階で、時は加速し「高速で生と死が繰り返される」ようになります。
禁断の果実(14の言葉で言う「イチジクのタルト」)を食べることで、生物に必ず死が訪れるのなら、天国の実現には「死」が必要であり、そのために必要なのが「禁断の果実(イチジクのタルト)」だったのではないか。
14の言葉に「イチジクのタルト」が含まれるのは、こういう理由からだと思いました。
ドロローサへの道
ヴィア・ドロローサ(苦難の道)はイエス・キリストの「最後の歩み」とされています。
この「最後の歩み」とはまさに、プッチ神父がこの世界を新しく生まれ変わらせるプロセスでの最終段階(=最後の歩み)と考えると、スムーズに理解できます。
特異点
人工知能(AI)が人類の知能を超える転換点のことを「シンギュラリティー」と言いますが、この言葉には「特異点」という意味もあります。
Dioやプッチ神父が実現を願った「天国」が実現できる転換点(シンギュラリティー)を「特異点」と表したのだと思います。
またこの「特異点」は14の言葉に2回登場しています。
「カブト虫」以外に2回以上登場する言葉はこの「特異点」だけですので、重要な意味があると考えられます。
ジョット
「ジョット」とはイタリア人画家のジョット・ディ・ボンドーネの「ジョット」だと思います。
ジョット・ディ・ボンドーネの代表作に、スクロヴェーニ礼拝堂の「フレスコ画」があります。
このフレスコ画は聖母マリアの生涯を描いていて「人類の救済」における、マリアの役割を“祝福”する形で描写されています。
「人類の救済」とはまさにDioやプッチ神父が(天国を実現することで)成し遂げようとしていることです。
その「人類の救済」を果たす役割の人物(フレスコ画では聖母マリア、ジョジョではDioとプッチ神父)を「祝福」する形でフレスコ画を描いたジョット・ディ・ボンドーネ。
彼の名をとって「ジョット」を14の言葉に加えたのだと思います。
天使(エンジェル)
天使は「神の使い」です。
キリスト教における、天使(Angel)の語源は「伝令(Messenger)」を意味する後期ギリシア語で、文字通り「神のお告げを伝える伝令役」として、天使は描かれています。
しかし、聖書によれば「天使」の役割は、次のように矛盾した面が見られます。
- 天使は人間が歩む道すべてで「彼らを守る」よう神から命じられている
- 天使が吹きならすラッパにより世界に災厄が訪れた
- 最後の審判にも天使が関わっている可能性
「人間を守る」という天使の役割はある意味で、Dioやプッチ神父に通じます(天国の実現で彼らを幸せにする)。
「世界に厄災をもたらす」という天使のラッパは、これもまた天国実現の過程でもたらされる災難とも見て取れます。
そして「最後の審判」という、「世界が終わった後に人間の生前の行いが審判され、天国行きか地獄行きかが決められる」という信仰。これに天使が関わっているとすれば、Dioやプッチ神父はこの意味で「天使」なのかもしれません。
このような相反する面がありながらも、それぞれを「天使」という言葉が内包している。
そしてそれらの相反するモノは、Dioやプッチ神父がやろうとしていることにスムーズに融合する。
このことから14の言葉に「天使(エンジェル)」が含まれたのだと思います。
紫陽花
青色や紫色の紫陽花(あじさい)の花言葉には「辛抱強い愛」と「無情」があります。
無情とは「思いやりがないこと」という意味です。
青色や紫色の紫陽花には「愛」と「無情」という正反対の花言葉がつけられています。
ある意味で天国を実現させるのは、究極のそして「辛抱強い愛」と考えることができます。
それに対して、それが実現する過程の中で生物は様々な困難を味わいます。
それを“わかってて”天国実現へのプロセスを進めるわけですから、その時は文字通り「無情」であるはずです。
紫陽花の正反対な「愛と無情」という花言葉は、Dioやプッチ神父の「矛盾するが同時に存在する内面」を表していると思います。
秘密の皇帝
キリスト教ではイエス・キリストは唯一神であり、「皇帝」であるとされているようです。
ローマ皇帝(コンスタンティヌス)の時代のキリスト教では、人類を「救済」する方法として「イエス・キリスト(皇帝)と1つになること」と考えられていました。
新約聖書には次のようにあります。
「もしも、イエスと一つになるなら、ユダヤ人もギリシア人もなく、自由人も奴隷もなく、男も女もない」
これは今で言う「ワンネス」の考え方に近いと思います。
プッチ神父はスポーツ・マックスに次のように語っています。
「だがその『魂』をたったひとりの人間が『何個』も『何万個』も『所有できる方法』があるとしたなら……、その人間は何を見ると思う?その人間の先にはどんなことが起こる?」
これは皇帝であるイエスと1つになる、という人類救済の方法とほぼ同じと感じます。
プッチ神父は自分自身が皇帝となり、何万個もの魂を所有(それらと1つになり)し、人類を救済する(=天国の実現)。
秘密の皇帝とは「プッチ神父」のことを指すのではないかと思いました。
。。。
ジョジョ第6部に登場する「14の言葉」を私なりに考察してみました。
個人的には元ネタ2つを発見したときに、凄く気持ちいい!!と感じました。
参考になれば幸いです。
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